【会いにいく、能登。~能登で歩む人々をインタビュー(13)~】「ここだけでいいな」と思った。都会を飛び出し、能登で“のらり”をつくる岡田さん(七尾市)
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能登には、景色や食だけでなく、「この人に会ってみたい」と思わせてくれる人がいます。今回訪れたのは、七尾市でIT・ソフトウェア開発事業や宿泊事業を営む岡田さん。ヨーロッパでの生活を経て、「日本の地方を知りたい」と能登を訪れたのは2022年のこと。もともとは日本に5カ所ほど拠点を持ちたいと考えていましたが、能登に来て「ここだけでいいな」と思ったといいます。
能登で暮らし、さまざまな事業を手がける岡田さんに、能登に惹かれた理由や宿泊事業である「古民家のらり」に込めた思いを聞きました。
プロフィール
岡田 渉(おかだ わたる)
1997年生まれ
埼玉県川越市出身
株式会社ノラス 代表取締役
「日本のことを全然知らない」。ヨーロッパから帰国して向かった能登
日帰りで能登へ。たまたま目に入った不動産屋で、その日のうちに物件を申し込む
- 「ここだけでいい」と思っても、実際に住むまでにはもう少し時間がかかりそうですが……。

- 岡田さん
- その日のうちにたまたま目に入った不動産屋に駆け込んで、そのまま羽咋市の物件を申し込みました。

- 日帰りで来て、その日に家を決めたんですか!?

- 岡田さん
- そうです(笑)
後日契約して、友人とふたりで半年くらい住んでから七尾市に移りました。
羽咋市にいたころは千里浜海岸をランニングコースにしたり、夕陽を見ながらBBQしたり、能登の西側ならではの暮らしを満喫していました。 
- ご友人まで!なんという行動力!

震災後に出会った古民家。事業をそのまま引き継ぐことに
- 「古民家のらり」を始めた経緯について教えてください。

- 岡田さん
- 不動産屋さんに「商売をするなら七尾がいいんじゃないか」とアドバイスをいただき、羽咋に住みながら七尾の古民家を購入しました。宿泊施設にしようと思っていたのですが、令和6年能登半島地震でのダメージが大きく、公費解体となりました。

- 「古民家のらり」は岡田さんが能登で購入した2軒目の物件だったんですね。

- 岡田さん
- ここは昔から宿として運営されていた物件でした。地震後に元オーナーのおじいちゃんが九州へ避難して、宿を引き継いでくれる人を探していて。知人経由で紹介していただき、事業承継する形で購入しました。
宿泊予約のページもそのまま引き継いで、2024年からゲストハウスの運営を再開しました。2026年2月のリニューアルを経て、現在は一棟貸しの古民家宿として営業しています。 
- 七尾で商売を始めるにあたり、周囲の方の反応はありましたか?

- 岡田さん
- 周りからは、この辺りの人は閉鎖的なんじゃないかと言われることもありましたが、僕自身はまったくそう感じませんでした。地域との関わりも含めて、入りづらさみたいなものは感じなかったですね。

「自分が一番うれしいことをしよう」リニューアル時の想い
2026年2月に「古民家のらり」はインテリアの新調や畳の張り替えなどを行い、リニューアルオープンしました。
その際に岡田さんが考えたのは、宿泊客にどう見せるかではなく、もっとシンプルなことだったそうです。
- リニューアルにあたり、大切にしたことはありますか?

- 岡田さん
- 「自分が一番うれしいことをしよう」と思いました。
僕は埼玉の住宅街で育ったので、昔から「広い家で自由に過ごす」ということに憧れがあったんです。
岩手のおばあちゃんの家に行くと、親戚が集まってスイカ割りをしたり、BBQをしたりしていました。親戚が40人くらいいて、今でも毎年30人くらい集まるんです。
そういう思い出があったので、みんなが集まって自由に過ごせる場所をつくりたかったんだと思います。 
- なるほど。子どもの頃の楽しかった記憶につながっているんですね。

- 岡田さん
- 年に3回くらい東京から友人が遊びに来てくれるんですが、みんなでここに集まっているのを見ると、「これがしたかったんだな」と思えます。

都会で狭い空間に疲れた人にこそ、至福のひと時を。
- 「古民家のらり」の楽しみ方はありますか?

- 岡田さん
- 家の中で寝転んでほしいです。
畳の上でゴロンと横になるだけ。それが僕が一番幸福を感じる過ごし方なので。 
- 岡田さんもたまに転がっているんですか?

- 岡田さん
- よく転がってますよ(笑)
「のらり」という名前にも、のんびり過ごしてほしいという思いがあります。
何か特別なことをしに来るというより、ただ能登の暮らしを味わいに来てほしいんです。 
- どのくらい滞在するのがおすすめでしょうか。

- 岡田さん
- 泊まった方からは「一泊じゃ足りない」という声が多いです。
自分としても、できれば二泊くらいはしてほしいですね。
「観光に来たからできるだけたくさんの場所を回らなければ」と考えるのではなく、宿でゆっくり過ごす。近所を歩いてみる。気になる店があれば入ってみる。
ここでの滞在では、観光スポットを巡る旅とは少し違う、能登の日常に近い時間を味わえると思います。 
一本杉通りに事務所を開設。能登で広がったつながりとこれから
2024年6月には七尾市の一本杉通りに事務所をオープンしたという岡田さん。地域で活動する人たちとの交流も生まれました。
- 能登に来てから、仕事の幅もどんどん広がっていますね。

- 岡田さん
- そうですね。本業(IT・ソフトウェア開発)も伸ばしていきたいですし、宿泊施設向けのサービスも始めたいと思っています。
能登では個人経営の宿も増えてきているので、そういう宿の『おもてなし』を強化できるようなサービスができたらいいなと考えています。会社の人数も増やしていきたいので、採用も頑張ります。 
- 岡田さん自身が宿を運営しているからこそ、作れるサービスがありそうですね。今後の活動も目が離せません。

能登の暮らしを「のらり」と味わいに来てください
岡田さんがつくろうとしているのは、豪華な設備を楽しむためだけの宿ではありません。広い家に集まり、ごはんを食べたり、話したり、ただゆっくりしたりする。岡田さん自身が子どもの頃に、おばあちゃんの家で経験したような時間です。
日々の慌ただしさから少し離れたくなったら、能登へ。
観光スポットをいくつも巡らなくても、広い家でのんびり過ごして、町を歩いて、おいしいものを食べるだけでもいい。そこは、ヨーロッパから帰国し、日本の地方を知ろうと能登を訪れた岡田さん自身が「ここだけでいい」と思った場所でもあります。
次の旅では「古民家のらり」に泊まって、何もしない時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
新卒では東京のIT企業に就職して、その後2年くらいヨーロッパで暮らしながらフリーランスのエンジニアをしていました。そのときに「自分は日本のことを全然知らないな」と気づいたんです。
それで、日本の地方に行ってみようと思うようになりました。
当初は「日本に5カ所くらい拠点があったらいいな」と思って、自分が行ったことのない地域に目星をつけていたんです。まず最初に能登に来てみたら「あ、ここだけでいいな」と。
人もいいし、自然もあるし、ごはんもおいしい。他の4カ所はもういいや、という気持ちになりました(笑)