【会いにいく、能登~能登で歩む人々にインタビュー(7)~】「復興の最先端」から未来を創る!奥能登元気プロジェクト・奥田和也さんの挑戦
2024年能登半島地震の傷跡が今なお残る奥能登。厳しい現実に直面しながらも、この地で圧倒的なバイタリティと信念を胸に、復興のその先を描き続けている人がいます。
今回ご紹介するのは、石川県輪島市門前町出身の奥田和也(おくだ・かずや)さん。株式会社「奥能登元気プロジェクト」の代表取締役として、飲食・宿泊・福祉・農林業・リノベーションなど多岐にわたる事業を手がけ、地域に新しい風を吹き込んでいます。
過疎化が進む能登で、なぜ彼は挑み続けるのか。「過疎地でも商売は成り立つ」を自ら証明し、日本初の過疎地復興モデルを築こうとする奥田さんの挑戦と、今伝えたいメッセージをお届けします。
「〜がないから」を消していく!若者が選んで働ける場所を自分の手で
「能登には働く場所がない」・「我が子には“将来は能登を出ていってほしい”と言ってしまう」
そんな諦めの声に強い危機感を抱いた奥田さんは、40代後半で故郷へUターンし、2019年に「株式会社奥能登元気プロジェクト」を設立しました。
目指したのは、若い世代が地元で仕事を選び、生き生きと働ける職場環境づくりです。地震前には13人の社員のうち、20代の能登出身者が4人も活躍していました。「地元の資源を、地元の若い子が活かして地域を活性化させる。今の若い子は本当に優秀なんですよ」と語る奥田さんの表情には、若者への信頼が溢れています。
奥田さんの事業づくりの根底にあるのは、地元の人が離れる理由をひとつずつ消していくというシンプルな哲学です。これがない、あれがないと嘆くくらいなら、自分たちの手で創り出せばいい。その想いから、若者が関心を持ちそうな事業を次々と形にしてきました。
奥田さんが手掛ける事業のひとつ、奥能登WORKSスタジオは、障害のある方の就労支援と農業を結びつける障害福祉サービスです。作業を丁寧に分業化し、確実な労働力を発揮できる農福連携の仕組みを構築。金沢や加賀から届く規格外野菜を選別・加工し、おいしいレトルトカレーへと大変身させています。
さらに、地域の森林資源を再生・活用する奥能登フォレスターや、増え続ける空き家に新たな価値を吹き込む空き家再生事業奥能登リノベなど、能登の課題を事業化し、若い世代が誇りを持って働ける場を広げています。
過疎地でも商売は成り立つ!「小さなビジネス」で回す経済
能登半島地震により、奥田さんの会社も大切な社員を亡くすなど甚大な被害を受けました。奥田さんの拠点のひとつである輪島市南志見(なじみ)地区は、地震前に約700人いた人口が地震後には約300人にまで激減。人口流出は今も止まらず、「あと2〜3年で100人を切ってしまうかもしれない」という深刻な限界集落の現実に直面しています。
しかし、奥田さんの決意が揺らぐことはありませんでした。「大きなビジネスをひとつどんと作るのではなく、小さなビジネスをいくつも増やして成功させていく。これこそが人口減少の進む能登に最も適した持続可能な復興モデルだ」と言います。
「過疎地で商売が成り立つのか」と周囲から首をかしげられることも多いそうですが 、答えは明確にYESです。
奥田さんが展開する事業の拠点施設ココハサトマチでは、ランチやオードブルの提供で、なんと1日に数十万円もの売上を記録することがあります。これは都市部の人気店舗にも引けを取らない数字です。過疎地だからと諦めるのではなく、常に情報発信を続け、人を呼び込む工夫を凝らしているからこそ、多い日には大型バスが2台も訪れるほどのにぎわいを生み出しています。辺鄙な場所であっても、やり方次第できちんと商売は成立するのです。
「周りからは、「自分のことばかりしている」と言われることもあります。でも、まずは民間である自分が経済的にしっかり立ち、この地に残り続けることこそが、本当の意味での復興なんです。経済を生み出さなければ、地域の復興なんてあり得ません」と奥田さんは語ります。
「能登の方舟」完成へ!真の現実と課題を学ぶ「学びの旅」の提案
過疎化が極度に進んだ地域を復興させるという課題には、日本全国を見渡しても前例がありません。だからこそ奥田さんは、能登を単なる被災地ではなく日本の課題と未来を学ぶ最先端の地域と捉えています。
奥田さんは、人を集めるための重要なツールとしてJAの倉庫を改修したイベントスペース南志見市場(なじみいちば)を開設。ここには現在、奥田さんの取り組みや過疎地ビジネスのノウハウを聞きに、全国から商工関係者や行政担当者、政治団体の関係者などが、ひっきりなしに訪れています。
しかし、こうした視察のあり方に対して、奥田さんは強い問題意識を抱いていました。「多くの人が視察という名目で来られますが、その実態はほとんどが立ち寄りの観光で終わってしまっています。でも、本当の視察や地域のリアルな課題というのは、実際にその土地に泊まり、生活の気配を感じてみないとわからないことがたくさんあるんです」
そこで奥田さんは、宿泊機能の拡充に乗り出しました。古民家や既存施設をリノベーションしたココハオダヤ、ココハソリジといった小規模な宿泊施設を地域内に点在させ、地域全体で最大52人が宿泊できる体制を整え、大型ホテルがなくても、大型バスで訪れる団体客を受け入れられるようにしました。宿泊してもらうことで客単価が上がり、地域にもたらされる経済効果も大きくなります。
さらに、その中核拠点として元保育園を改修した研修宿泊施設能登の方舟(のとのはこぶね)が、2026年8月に完成しました。
能登の方舟は、一度に30人を受け入れることができる本格的な研修施設です。1泊2日や2泊3日の滞在型プログラムを用意し、ここを拠点として能登の現状を深く知り、過疎化や防災、地域経済のあり方を実体験として持ち帰ってもらう「学びの旅」を提案しています。
経営目線で捉える「能登の本当の魅力」と絶品お立ち寄りスポット
能登の魅力について尋ねると、奥田さんからは経営者ならではの客観的で目からうろこが落ちるような回答が返ってきました。
「よく地元の人は豊かな自然や昔ながらの温かい暮らしを能登の魅力としてアピールしますよね。でも冷静に俯瞰すれば、そんな風景や自然は日本の地方に行けばどこにでもあるんです。経営目線で見れば、今の能登は経済が完全に停滞していてダメな状態。でも、あえて誰も挑戦しない場所だからこそ、ゼロから自由に挑戦できる。この圧倒的なチャレンジのフィールドであることこそが、僕にとっての能登の最大の魅力なんです」
そんな奥田さんに、能登を訪れたらぜひ味わってほしいおすすめグルメを伺うと、熱いお答えが返ってきました。
「能登では、飲食店はもちろん、スーパーで買えるお刺身が本当においしい!都会の高級居酒屋で高いお金を出して食べるお刺身よりも、能登のその辺のスーパーで売っているお刺身の方が新鮮で絶品だと思うんですよ」
特に奥田さんが太鼓判を押すのが、鳳珠郡能登町にあるスーパーしんや 小木店。震災の大きな被害を乗り越え、2026年7月7日に移転オープンを果たした地元密着の名物スーパーです。店内に並ぶ旬の地魚は鮮度抜群。能登を訪れた際は、ぜひ立ち寄って本物の海の幸を選び、購入してみてくださいね。
基本情報
スーパーしんや
【小木店】
石川県鳳珠郡能登町字小木15ー19ー1
TEL:0768-74-0305
営業時間:9:30〜18:30
【柳田店】
石川県鳳珠郡能登町字柳田礼16ー1
TEL:0768-76-1203
営業時間:9:30〜18:30
観光客の皆様へ「あがき、進む“リアルな能登”の今を見てほしい」
最後に、これから能登を訪れるすべての人々へ向けて、奥田さんからメッセージをいただきました。
「能登に来ていただく際、ただ綺麗に整備された観光地や綺麗な絶景だけを見て満足して帰らないでほしいんです。いま石川県は絶景観光をアピールしていますが、絶景だけでは人はそこで生活できません。みなさんに本当に見てほしいのは、震災から時間が経っても復興が止まってしまっている場所であり、その中で住民や事業者が必死にあがいている現場です。いまだに電気や水道すら復旧していない地域もあります。行政の方針としてインフラ復旧を諦め、住民の移住を進めて集約化を図っている地区もあります。そうした厳しい現実、諦めざるを得なかった場所の姿からも目を背けずに見てほしいのです。
過疎化の極限にあるこの能登が、日本で初めて過疎地からの本格的な復興を成し遂げる選ばれた場所になる。その歴史的なプロセスと現場の熱気を、ぜひ生で体感してください」
一緒にやろう!なじみポーズ
奥田さんの活動拠点である「ココハサトマチ」は、訪れた方の多くが記念撮影をする、知る人ぞ知る撮影スポットです。
奥田さんがいらっしゃるときは、ぜひ一緒に「なじみポーズ」で写真を撮ってみてください。不在のときでも、奥田さんの等身大パネルと一緒に撮影できます。ポーズのコツは、「本気でポーズをとること!」だそうですよ。
過疎化という日本の未来の課題に正面から向き合い、諦めずにあがき続ける奥田さんと地域の人々。その姿は、今の能登でしか目にすることができないものです。能登を訪れ、人と出会い、おいしいものを食べ、厳しい現実と未来への挑戦を知る。あなたが一歩を踏み出し、現地を訪れること自体が、能登の未来を明るくする原動力になります。
復興の最先端で輝く奥田さんに会いに、あなたも能登へ出かけてみませんか?
Column
株式会社奥能登元気プロジェクト
住所:石川県輪島市里町1-6-1
電話:0768-34-1350
店舗:ココハサトマチ
住所:石川県輪島市里町1-40
営業時間:10:00~17:00(お食事の提供は15:00まで)