金沢のおすすめ宿5選|町家・古民家をリノベしたこぢんまり宿で自分時間
金沢市内には、便利なホテルや旅館がたくさんありますが、一方で、町家や古民家を再生した宿も揃っています。それらは金沢の伝統を知ることができたり、暮らしの断片を感じることができる宿です。多くは一棟貸し、もしくは2組までの小規模で、セルフチェックイン・チェックアウト。静かにゆっくりと落ち着きたい人にとっては、ストレスなく過ごせます。
どこもデザイン性が高く、アートが秀でていたり、家具が魅力的だったり個性豊か。そんな美意識や哲学に共感して泊まるというニーズも高いようです。宿としての快適性を保ちながら、自由に、暮らすように旅したい。ただ寝泊まりするという機能だけではなく、街を知り、思い出を残したい。そんな期待に応えてくれる5つの宿を紹介します。
紹介している宿を地図で確認
どの宿も金沢市内の観光に適したエリアにあります。
- Haku_ma / 白間
- 八沢
- new tradition hotel kanazawa
- YALDA apartment
- KURO 町家ヘリテージホテル
Google Mapの読み込みが1日の上限回数を超えた場合、正しく表示されない場合がございますので、ご了承ください
写真を撮りたくなる“角度”が満載の「白間」
宿の前まで歩いてくると、派手なサインもなく静かに佇む一棟貸しの宿「白間」。
町家特有のコンパクトな空間には、天井の梁が荒々しく残されています。吹き抜けがある2階建てで、吹き抜けから気持ちのよい光が差し込みます。
室内には、オーナーが好きだという家具が揃えられています。ジャン・プルーヴェのデザインによる「シェーズトゥボワ」、「フラマ」の椅子、「カリモクケース」のソファ、「ルイス・ポールセン」の「フリントウォール」ライト、「ニューライトポタリー」の「モンク」ライト、などなど。日本のブランド、そして日本の建築と相性のいい北欧ブランドを中心に空間に馴染ませています。
壁に彩りを与えているのがアートの数々。階段を上っている途中から見えてくる迫力のある書は、いまや世界的に注目を集めている新城大地郎さんの作品。さらに和紙作家・ハタノワタルさんの作品は1階の白い壁にモノクロームの世界を表現しています。ベッド上の壁に淡い水墨画のようなものが飾ってあると思えば、これはモノクロ写真。実はオーナーの寺田征弘さんの本業は写真家で、建築写真をたくさん撮っているなかで、自分でも空間を表現してみたくなり宿業に挑戦してみたとのこと。
ゆえに、室内は「写真を撮りたくなる角度」にあふれています。「全体が入らない」ということがよく発生する建築・室内写真ですが、引きで撮りやすいように設計してあるとのこと。さすが写真家目線、部屋のあちこちから撮りまくってしまいそうです。
基本情報
宿から石川の工芸を感じる「new tradition hotel kanazawa」
町家宿という意味では本丸といってもいい東山エリアにある「new tradition hotel kanazawa」は、わかっている範囲でも、なんと19世紀に建てられた町家を改装した一棟貸しの宿です。
new tradition hotel kanazawaでは工芸をテーマにしていて、宿内のいたるところに魅力的な工芸作品を散りばめています。入口から入ってすぐに、奥へと続く通り庭のようになっており、ギャラリーとして利用しています。取材時に展示されていたのは、漆芸家・桐本滉平さんの漆塗りの花器。美しいフォルムと艶に惚れ惚れします。作品として鑑賞して目で楽しんだ後は、桐本滉平さんの酒器などを実際に使用することができます。
さらに「錦山窯」5代目、吉田太郎さんの九谷焼の抹茶碗も手に取って使用することができます。ふたりはともに90年代生まれと若く、これから工芸の伝統を進化させながら守っていく作家。使われている器は、ただ購入したわけではなく、プロジェクトを作る仲間というスタンスで、new tradition hotel kanazawaのためのエクスクルーシブとしてつくってくれた作品です。
ダイニングテーブルの天板はまるで金属のように思わせますが、実は能登の輪島市にある手漉き和紙工房「仁行和紙」に制作してもらったもの。ダイニングテーブルなので、水に強いことが必要となるため、何度も塗装を重ねることで耐水性を高めたといいます。渋く光る茶色は、なんと能登の栗を混ぜて深みを出してくれたとか。
宿という場を使って、作家に新しい試みに挑戦してもらう。これからの工芸の息吹を感じる宿です。
new tradition hotel kanazawa photos by Nanako Ono
基本情報
new tradition hotel kanazawa
所在地:石川県金沢市東山1-10-2
チェックイン:15:30~23:59
チェックアウト:11:00
宿泊定員:最大5名
駐車場:なし
地域とのつながりを保つ「八沢」
せせらぎ通りや長町武家屋敷跡エリアという観光地から、少し歩くと住宅街になっていきます。さらにその狭い路地を入った場所に、パッと覗いただけでは気がつかない、まさに街に馴染んだ一棟貸しの宿「八沢」があります。一瞬、誰かの家に来たのかと錯覚します。
エントランスをくぐると、そのまま町家の通り庭のように奥までフラットに繋がっています。1階はリビング、ダイニング、キッチンになっていて、あえて仕切らず広く抜けている空間。
そのまま奥に目をやると、小さな庭があります。富山の造園家、西尾耀輔さんによる設計で、定番の日本庭園ではなく、地域を歩いて周辺の植生をチェックし、そのまま採用したり、雰囲気を生かすことで、外と違和感のない世界を作り上げています。植栽の先に見える隣の家ともつながって、それすら景観として組み入れているとか。
視界のすべてを完全にシャットアウトしない作り方には、八沢の地域に対する眼差しが表れています。それは、典型的な金沢や伝統的な都市を求める姿からは少し異なる目的です。強いブランディングをするのではなく、例えば家具なら「バラけて配置されてはいるけど、微妙にチューニングは合っている」といいます。実際に金沢に住む人がみんな古い町家に住んでいるわけではありません。伝統を意識しながら、きちんと新しさを取り入れています。
「金沢っ子」の友人の家に遊びに行ったかのような宿。
だれかの暮らしの息吹を感じる。旅と日常と地域がゆるく混じり合う。ちょっと新しい感覚を得られそうです。
基本情報
「YALDA apartment」が目指す、やさしい宿
「金沢21世紀美術館」の目の前(でも路地裏)という最高の立地にあるYALDA apartment。ということは本多の森も兼六園も、石浦神社もすぐ近くということです。さらには、片町や香林坊にも徒歩でアクセスできます。
YALDAは、フォトグラファーとインテリアや空間デザイン、ブランディングなどを手掛けてきた夫婦により運営されている古民家再生プロジェクト。YALDA apartmentは金沢や町家っぽさを意識することはなく、現代のライフスタイルの延長上にある宿です。
2部屋ありますが、ともにメゾネットタイプなので、上の階がうるさいなんてことも、下の階に気を使って静かに歩くなんて必要もありません。開業時は、民泊特有のトラブルも心配していましたが「自分たちが好きなものを、好きなようにつくった」ので、そこに共感してくれる人がお客さんとして泊まってくれます。「美意識」がうまくフィルターとして機能しているようです。
YALDAが目指したのは「やさしい宿」。リネンは植物由来の洗剤で洗ったり、体にふれる箇所はなるべく天然素材を採用しているので、あたたかさがあります。なんと、リーズナブルに泊まれることも「優しさ」のひとつだとか。
部屋はとてもミニマルで、なるべく削ぎ落としたデザインにしています。その理由は「なにも押し付けたくない」から。とはいえ、二人がこれまで歩んできた道のりやセンスが滲み出ています。泊まる人にとって本当に必要なものは何か? 「作り込んでいない部屋」をさりげなく作り込んでいるのです。
基本情報
和モダンデザインの正解「KURO 町家ヘリテージホテル」
ここ1〜2年で、金沢の町家を改装した小規模の宿は増えていますが、その先駆けになったのが2022年にオープンした「KURO」です。築140年以上の元木綿問屋を歴史的建造物修復士が改装して、1日2組限定の宿として蘇りました。
お部屋は「デラックスキング」と「ヘリテージスイート」。どちらも和の設えが美しく落ち着く空間。内装設計を担当したのは、金沢の橋本建築造園設計です。客室の天井は渋柿染の和紙を用い、壁は伝統的な土の塗り壁を左官にお願いしたといいます。和を現代的解釈したデザインの“正解”のように感じます。2階にある「ヘリテージスイート」の窓からは、春になると目の前にある「黒門前緑地」の満開の桜を鑑賞できます。
入口をくぐると、まずは土間スペースに共用のパントリーがあります。シンクは銅板で、以前からあったものをそのまま利用している味のある逸品。それに合わせて新しい銅板の台もあり、経年変化が楽しみです。かつての暮らしを彷彿させながらも、すべてが整えられていて、ちょっと使うのがもったいないくらい。しかし近江町市場も近いので、自分で調理してみても町家暮らしの気分に浸れます。
壁に大きく飾られているアートパネルも橋本さんによるもの。実は、この町家にもともとあった、油団(ゆとん)を切り取ったもの。油団とは、何枚も重ねた和紙に荏胡麻油や柿渋を塗り重ねたもの。まるで現代アート、もしくは抽象画のようでもあり、それでいて部屋にアクセントを与えています。既存のものだけに、アートにしても空間として違和感がなく彩っています。
基本情報
金沢では、宿選びも楽しい!
どの宿も、いわゆるビジネスホテルとも、ラグジュアリーホテルとも違います。
部屋には最低限のものしかなく(テレビや食事などはない)、至れり尽くせりではありませんが、快適に過ごせる。
金沢でそんな宿をお探しのみなさんにおすすめです。
宿だって旅のハイライト、アクティビティのひとつと考えれば個性はとっても大切です。