朱鷺の舞う能登|半世紀ぶりにトキが石川・能登の大空へ
2026年5月31日、能登半島に位置する石川県羽咋市で、国の特別天然記念物であるトキ8羽が本州で初めて放鳥されました。かつて日本各地に生息していた野生のトキは、乱獲や生息環境の悪化によって絶滅。本州における最後の生息地の一つが、石川県能登地域でした。
能登は現在も震災からの復旧・復興に取り組む途上にあります。そんな中で実現した今回の放鳥は、失われた自然の再生と地域の未来への希望を象徴する出来事です。半世紀ぶりに能登の大空へ羽ばたいたトキたち。その優雅な姿が、復興へ歩む能登の新たなシンボルとなることが期待されています。
本州初!能登にて朱鷺が放鳥されました
2026年5月31日、石川県羽咋市で国の特別天然記念物・トキ8羽が本州で初めて放鳥されました。放鳥式には秋篠宮ご夫妻をはじめ、多くの関係者や地域住民が参加。定員600人に対し3,000人を超える見学者が見守る中、木箱から飛び立ったトキたちは能登の大空へと羽ばたいていきました。
放鳥されたトキには個体識別のため羽に色が付けられており、野外でも観察しやすくなっています。
2週間後、6月14日には羽咋市に設置したケージから10羽のトキをソフトリリース方式で放鳥しました。
朱鷺の特徴と歴史
【トキって】
トキは学名を「Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)」といい、かつて日本をはじめ中国や朝鮮半島などに広く分布していたサギに近い鳥です。
翼を広げると見える淡いピンク色の羽は「トキ色」と呼ばれ、餌に含まれるカロテノイド色素によって発色するといわれています。体長は約75cm、翼を広げると130~140cmにもなります。
主な食べ物はカエルやドジョウ、タニシ、カニ、エビ、昆虫などで、田んぼや湿地などの豊かな自然環境の中で暮らしています。
- ドジョウを食べるトキ
(提供:いしかわ動物園) -
- トキ色と呼ばれる淡いピンク色のトキ
(提供:いしかわ動物園) -
- 繁殖期には灰色になります
(提供:いしかわ動物園) -
【トキの歴史】
本州最後のトキ「能里(のり)」は能登で捕獲され、繁殖のため佐渡へ移されました。その後、昭和56年には国内に残る最後の5羽も捕獲され、日本の野生のトキは姿を消しました。人工繁殖は難航し、平成15(2003)年には日本産のトキが絶滅しました。
しかし、中国から贈られた「友友(ヨウヨウ)」と「洋洋(ヤンヤン)」のペアによって日本初の人工繁殖に成功。平成20(2008)年には佐渡で初めて放鳥が行われました。現在は佐渡で多くのトキが野生化し、石川県にもたびたび飛来しています。
- 本州最後のトキ「能里(のり)」の剥製
(石川県歴史博物館収蔵) -
- 珠洲市に飛来した野生のトキ
(提供:石川県) -
- いしかわ動物園のトキ
(提供:いしかわ動物園) -
なぜ放鳥の地に石川県・能登が選ばれたのか
能登が本州初のトキ放鳥地に選ばれた理由の一つは、かつて本州最後の野生トキが穴水町で生息していたことです。それは能登がトキにとって暮らしやすい環境であることを示しています。
トキはドジョウやカエル、昆虫などを食べて暮らすため、豊かな里山や水田環境が欠かせません。能登では地域ぐるみで農薬の使用を減らし、生きものが暮らしやすい環境づくりに取り組んできました。
また、「能登の里山里海」は2011年に佐渡とともに世界農業遺産に認定されるなど、自然と人の営みが共生する地域として高く評価されています。こうした豊かな環境が、本州初の放鳥地として能登が選ばれた大きな理由となっています。
朱鷺を観察するときのマナー
《トキに近づかず、やさしく静かに見守りましょう》
トキを驚かせないように、やさしく静かに見守りましょう。
車から降りずに、双眼鏡などで遠くから静かに観察しましょう。大きな音や光を出さないようにしましょう。
《繁殖期間は巣に近づかないようにしましょう》
2月~7月頃はトキの繁殖期です。この時期に人が近づくと、巣づくりや子育てをやめてしまうことがありますので、できるだけ人の姿を見せないことが大切です。観察や撮影などでトキの巣には近づかないようにしましょう。
《トキを見つけても餌をあたえないでください》
放鳥されたトキは、自分でエサを獲るよう訓練されています。トキが自然の中で暮らせなくなってしまうのでえさを与えないでください。
《地域に迷惑をかけないようにしましょう》
トキは集落周辺の水田、草地などでエサをとり、木の上に巣をつくります。観察する時は、無断で私有地や農道に立ち入らないでください。また、農道や林道に駐車して通行の妨げにならないようにしましょう。
皆様からの朱鷺の目撃情報を募集します
石川県では、令和8年5月31日の羽咋市でのトキ放鳥後の定着に向けて、トキの分布等の把握や今後の野生復帰に活用するため、皆様からの目撃情報を募集します。
野生のトキを見かけたら、ぜひ情報をお寄せください。
半世紀越しの願い・・・村本義雄さんが語る朱鷺と能登
70年以上にわたりトキの保護活動と生態研究に尽力してきた村本義雄さん(101歳)。羽咋市出身の村本さんは、その功績が評価され、羽咋市から名誉市民の称号が贈られることとなりました。
国内で野生のトキが絶滅した後も、中国へ22回にわたり足を運び、日本でのトキ復活に向けて繁殖用個体の受け入れに尽力。日中の架け橋として大きな役割を果たしてきました。
また、自宅敷地内には私財を投じて「国際朱鷺保護交流資料館」を建設。中国で撮影したトキの写真や現地関係者との交流記録など200点以上を展示し、トキ保護の歴史や魅力を後世に伝えています。
- 巣作り(村本さん撮影)
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- 子育て(村本さん撮影)
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- 幼鳥(村本さん撮影)
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「能登の空に再びトキを――村本義雄さんに聞く」
- Q. なぜ本州初のトキ放鳥地として能登が選ばれたのでしょうか?

- A. 能登は本州で最後までトキが生き残った場所なんです。最後のトキ『能里(のり)』も能登におった。最後まで生き残ったということは、それだけ能登がトキにとって住みやすい環境だったということですよ。私はトキ自身がそれを証明してくれたと思っています。

- Q. トキが暮らすためにはどのような環境が必要なのでしょうか?

- A.トキはドジョウやカエル、昆虫なんかを食べて生きています。だから餌になる生きものがおらんと生きていけません。農薬をたくさん使えば生きものは減ってしまう。トキを守るということは、トキだけじゃなくて、いろんな生きものが暮らせる自然を守ることなんです。

- Q. 昔、能登の人たちはトキをどのように見ていたのでしょうか?

- A.今はみんなトキを大事に思ってくれますが、昔はそうでもなかったんです。田んぼの苗を踏んだりするので、農家さんの中には嫌がる人もおった。人間の暮らしを優先して、餌場や住む場所がどんどんなくなってしまった。その結果が絶滅だったんです。

- エサを食べるトキ(村本さん撮影)
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- 群れで過ごすトキ(村本さん撮影)
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- Q. 村本さんにとって長年追い続けてきたトキとはどのような存在ですか?

- A.私にとってトキは、二度と絶滅させてはいけない特別な鳥です。大人たちは一度トキを絶滅させてしまった。その反省を忘れてはいけません。それから、日本のトキは中国が助けてくれたんです。だからトキは日中友好の象徴でもある。私はそのことを次の世代にも伝えていきたいと思っています。

- Q. 今の私たちひとりひとりに何かできることはありますか?

- A.まずはトキを大切に思う気持ちを持つことです。都会に住んでいる人が田んぼを作ることはできません。でも、トキを愛し、見守ることはできます。
それに、トキが暮らせる環境を守るということは、私たち人間が暮らしやすい環境を守ることにもつながるんです。自然を大切にする心を持ってほしいですね。
トキが能登に戻ってきたのはゴールではありません。これからも皆で見守りながら、トキが安心して暮らせる環境を次の世代へ残していくことが大切だと思います。 
基本情報
「国際朱鷺保護交流資料館」
所在地:〒925-0011石川県羽咋市上中山町レ8
電話番号:0767-24-1223
開館時間:電話にてお申し込みください
駐車場:1〜2台可
いしかわ動物園で朱鷺に会える!トキ里山館で学ぶ朱鷺の生態と飼育環境レポ
能登の空へ羽ばたいたトキ。その美しい姿や生態をもっと知りたいなら、石川県能美市の「いしかわ動物園 トキ里山館」がおすすめです。
館内では、エサをついばむ様子や鳴き声など、トキの自然な姿を間近で観察することができます。さらに学習展示コーナーでは、本物の羽に触れたり、トキの体の特徴を楽しく学んだりすることも可能。見て、触れて、学びながら、トキの魅力を体感できる人気スポットをご紹介します。
「トキ里山館」では、トキの分散飼育に取り組み、繁殖や野生復帰に向けた訓練を行っています。館内では、棚田や湿地など里山環境を再現した空間で、トキがのびのびと暮らす姿を間近で観察することができます。
エサを探す様子や優雅に歩く姿を眺めながら、トキが生きる環境や保護活動について学べるのも魅力。能登の空へ羽ばたいたトキたちの未来を支える取り組みを、ぜひ体感してみてください。
- 観察室
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- 小窓から観察
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- 小窓から見たトキ(繁殖期のため灰色)
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- トキ映像シアター
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- 『学習展示コーナー』
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- 『学習展示コーナー』
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基本情報
いしかわ動物園
所在地:石川県能美市徳山町600
電話番号:0761-51-8500
営業時間:9:00~17:00
※11月1日~3月31日は16:30まで
※入園は閉園の30分前まで
休業日:毎週火曜日、12/29~1/1 (火曜日が祝日の場合その翌日)
※祝日の場合は翌日、春・夏休み期間は無休
駐車場:普通車1,210台(無料)、バス16台(無料)
トキグッズを買うならここ!『道の駅のと千里浜』のお土産コーナー
トキのお土産を探すなら、『道の駅のと千里浜』がおすすめです。店内には、お菓子やキーホルダーをはじめ、「能登とき米」、トキをモチーフにしたネクタイ、記念ビールや地酒など、さまざまなトキ関連グッズが並びます。
また、レストランやベーカリーも併設されており、能登の豊かな食材を使ったグルメも楽しめます。さらに、ドライブの疲れを癒やしてくれる源泉かけ流しの足湯「だいこん足の湯」や、愛犬と過ごせるドッグランも完備。
能登観光の休憩スポットとしてはもちろん、お土産探しにもぜひ立ち寄ってみてください。
基本情報
道の駅のと千里浜
住所:〒925-0054 石川県羽咋市千里浜町タ1-62
電話番号:0767-22-3891
営業時間:9時00分~17時00分(土日祝などは18時00分まで営業)
レストラン:11時30分~14時00分(ラストオーダー13時30分)
マルガージェラート:10時30分~16時00分
ベーカリー:9時00分~売り切れ
店休日:第2・第4水曜日(2022年4月から、祝日除く)
駐車場:166台
能登観光の玄関口・羽咋市と中能登町|自然と歴史、そして朱鷺に出会う旅
本州初のトキ放鳥の舞台となった羽咋市。冬になると多くの白鳥が飛来することから「白鳥の里」として親しまれる邑知潟をはじめ、能登の豊かな里山里海が広がるこの地域には、トキや白鳥が暮らせる豊かな自然環境と、人々が大切に受け継いできた歴史や文化が息づいています。
令和6年能登半島地震を乗り越え、少しずつ活気を取り戻している能登。羽咋市と中能登町は、能登観光の玄関口としてアクセスしやすく、美しい自然や神社仏閣、地元ならではの食を楽しめる魅力あふれるエリアです。
半世紀ぶりに能登の空へ戻ってきたトキに思いをはせながら、復興へ歩む能登の風景や人々の温かさに触れてみませんか。ぜひ羽咋市と中能登町を訪れ、能登ならではのゆったりとした時間をお過ごしください。
石川県立自然史資料館ではトキの特別展が開催されています
基本情報
石川県立自然史資料館
特別展
トキ放鳥記念 とき、ふたたび能登の空へ 収蔵標本が語るトキの歴史
特別展会期:2026年5月31日(日)〜2026年10月12日(月・祝)
住所:〒920‐1147石川県金沢市銚子町リ441
電話:076-229-3450
開館時間:午前9:00~午後5:00(入館は午後4:30まで)
休館日:年末年始(12/29~1/3)
入館料:無料
駐車場:あり(大型バス可)
アクセス:金沢森本ICより車で約20分
まとめ
半世紀ぶりに能登の空へ戻ってきたトキ。その姿は、豊かな自然の大切さと、復興へ歩む能登の新たな希望を感じさせてくれます。
本州初の放鳥地となった羽咋市と中能登町は、能登観光の玄関口。美しい里山里海や歴史、文化、そして人々の温かさに触れながら、能登ならではの魅力を満喫できます。
ぜひ羽咋市・中能登町を入り口に、トキが舞う能登へ足を運び、この地ならではの自然や文化、人との出会いを楽しんでみてください。