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手取キャニオンロードは、白山市鶴来の「旧加賀一の宮駅」から、白山市瀬戸にある「道の駅瀬女（せな）」までをつなぐ、全長約20kmのサイクリングロードです。
主に北陸鉄道金名線の廃線跡を再利用して整備されており、鉄道跡ならではのゆるやかな勾配と、車道から分離された安心の設計が特徴です。霊峰・白山を望む手取峡谷の絶景や、里山の美しい風景を肌で感じながら、のんびりと自転車旅を楽しむことができます。

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• ■手取キャニオンロード | 白山手取川ユネスコ世界ジオパーク
• ■CHARIDEGO！サイクリングマップ | うらら白山人

9:06 野町駅 発

北陸鉄道石川線は、金沢市内の野町駅から白山市の鶴来駅を結ぶ私鉄路線です。

片町・香林坊エリアからは徒歩やバスで野町駅へアクセス可能。金沢駅エリアからは、IRいしかわ鉄道（旧JR）の西金沢駅を経由して、北陸鉄道に接続できます。

鶴来駅までは約30分。ローカル線ならではののんびりとした雰囲気を楽しみながら、目的地へ向かいましょう。

9:35 鶴来駅

終点・鶴来駅に到着。駅舎のすぐ隣に、レンタサイクルの「eくるっっっと」さんがあります。借り方はとっても簡単。受付カウンターで必要書類を記入するだけでOK。事前にインターネットから予約することも可能です。

今回お借りしたのはこちらの2台。スポーティな見た目で、どちらもカッコいいですね。eくるっっっとさんはスポーツバイク専門なので、置いてあるのはすべてスタイリッシュなモデルばかり。

初心者の同行者は左側の電動アシスト付きバイクを。そして、普段からロードバイクに乗っている筆者は右側のアシストなしバイクに挑戦です！

さっそく手続きを済ませたら、自転車や装備品についての説明を受けます。お値段は、電動アシスト付きが1日5,500円、アシストなしが1日3,300円。
一般的なレンタサイクルと比べると少し割高に感じるかもしれませんが、その分快適に遠くまで走れるので、満足度は高めです。いつもは筋肉痛になる同行者も、今回は余裕で楽しんでいましたよ。

また、eくるっっっとさんでは、ガイド付きサイクリングツアーのプランも用意されています。
白山手取川ジオパーク公認ガイドや通訳ガイドなど、土地の地形や歴史に詳しい専門家が案内してくれるほか、安全な走行指導ができる資格を持ったスタッフが同行するので、初めての方でも安心して旅を楽しめます。

ツアーの申し込みは2週間前まで。詳しくはお電話またはホームページをご確認ください。

10:00 白山比咩神社

表参道駐車場の奥、右手にサイクルラックがあります。

白山比咩神社（しらやまひめじんじゃ）は、全国に約三千社ある白山神社の総本社。日本三名山の一つに数えられる白山をご神体山と仰ぎ、地元では「しらやまさん」の愛称で親しまれています。

社伝によると、創建はなんと紀元前91年（崇神天皇7年）。二千年以上の歴史を持つ由緒ある神社です。ご祭神の菊理媛尊（くくりひめ）は、伊弉諾尊（いざなぎのみこと）と伊弉冉尊（いざなみのみこと）の仲裁をしたと伝えられ、縁結びの神様としても広く信仰されています。

いつ来てもひんやりと涼しく、優しい雰囲気が漂う表参道。中ほどには「琵琶滝」があり、心が洗われるような清らかさを感じられます。境内に入ると、右手に遥拝所が。ここには、大汝峰・御前峰・別山からなる「白山三山」の形をした大岩が祀られており、こちらもぜひ忘れずにお詣りしましょう。

しらやまさんで神さまのパワーをいただいたら、「おもてや」さんの大判焼きでエネルギーをチャージ！駐車場の敷地内に店舗があります。

しっとりとした薄めの生地に、甘すぎない独自製法のあんがぎっしり。大判焼きひとすじの副店長さんが、心を込めて焼いてくれます。冷めても美味しいので、ひとつはその場で、もうひとつはサイクリングの途中に食べるのも良いですね。実際、県内のサイクリストにもリピーターが多いそうです。

また、店舗前には冷凍の自販機もあり、暑い夏場には、30分ほど自然解凍して冷たいうちに食べる「冷判焼き」という裏ワザも教えてくれました。

「おもてや」さんは、白山市吉野にある大人気店「山法師」さんの姉妹店で、定番のあずきやカスタードに加え、おもてやさんではオリジナルの抹茶小倉や白つぶあんなども楽しめます。

季節限定のあんもあり、9月から12月に登場する「栗あん」は特に人気とのこと。近いうちに、また買いに行こうと思います！

併設の「おもてや食堂」では、ランチやカフェメニューも楽しめますよ。

しらやまさんから左へ1分ほど走ると、岩に彫られたお地蔵様がありました。これは、白山を開山した泰澄（たいちょう）が彫ったといわれている摩崖仏（まがいぶつ）です。
もともとは、白山比咩神社の最初の鎮座地とされる舟岡山のふもとに彫られていましたが、明治期におこなわれた手取川の七ヶ用水改修工事の際、現在の場所へ移されました。

元の場所では、岩塊に“かたがって（傾いて）”彫られていたことから、「かたがり地蔵」という名前が付いたそうです。
※「かたがる」は「傾く」の方言です。

お箸を供えると、歯の病気が治るという言い伝えもあるそうですよ。この地蔵前を右折すると、手取キャニオンロードに合流します。

手取キャニオンロードをゆったり10分ほど走ると、レトロなトラス橋が見えてきます。

こちらは「金名橋」。廃線前は「手取川橋梁」と呼ばれていました。橋の名前の由来となったのは、北陸鉄道金名線の前身である「金名鉄道」。
今から約80年前、白山を越えて「金沢と名古屋を結ぶ」という夢の構想のもとに建設された路線です。最終的には、旧鳥越村・河原山にある白山下駅で計画はストップしましたが、構想通りに進んでいれば、岐阜県の長良川鉄道（旧JR越美南線）へと接続される予定でした。長年にわたり、沿線の住民の足として親しまれてきましたが、1984年の豪雨災害をきっかけに惜しまれつつ廃線となりました。
現在の金名橋は、キャニオンロード用に新たに架けられたもので、金沢市内の御影大橋で使われていた鉄骨などを再利用。昔懐かしいリベット打ちの構造で、旧鉄道橋の雰囲気を再現しています。この橋を渡るときは、ぜひ「鉄橋をゆっくり渡る汽車の車窓」をイメージしながら、ペダルを漕いでみてくださいね。

金名橋を出発して約15分。瀬木野休憩所を通過し、緑のトンネルをくぐると、北鉄大日川バス停が見えてきます。
その先にある「キャニオンロード」の標識に従って左折しましょう。このあたりは、約3kmにわたって桜並木が続く区間。晴れた日には、白山を望むこともできます。

少し登り坂が続きますが、電動アシスト付きの自転車なら楽々ですよ。

春は雪の白山と桜のコラボがとても美しいです。

てどり桜街道の突き当たり、右手にある水車が目印の「一揆そば 長助」さんでお昼をいただきます。
サイクルラックは、建物に向かって左側。大きな釜の隣にありました。

いただいたのは、太めの田舎そばに草餅の天ぷらが入った「一揆そば」と、鳥越産米の「おにぎり」。

時は戦国時代──。このあたりでは一向宗の勢力が強く、一向一揆の戦に出陣する前に、餅を投げ入れたそばを食べたという言い伝えがあります。
その風習を今に再現したのが、鳥越名物の「一揆そば」。草餅の天ぷらは、長助さんオリジナルだそうです。出汁がしっかり染み込んでいて、とても美味しかったです。

もう一品、「田舎もり」は竹筒のお皿に盛られて提供されます。
太めの田舎そばは、挽きぐるみで色は黒め。味や香りがしっかりしているので、そばそのものの風味を存分に楽しめます。ツルツルとすすって食べるというよりは、もぐもぐ噛んで味わうのが「田舎そば」ならでは。もちろん、地元・鳥越産のそば粉を使用しています。

鳥越産のもち米と白山麓のヨモギを使った草餅は、毎日つきたて。単品でも販売されていますが、すぐに売り切れてしまうので、見つけたら即購入がオススメです。

そのほか、猪そばや鹿肉すじ煮込み、いのしし丼などのジビエ料理も人気。白山麓の旧尾口地区には、県内第一号となるジビエ肉の解体施設があり、安心・安全で美味しいジビエを味わうことができます。最近では、特に若い女性からの人気も高まっているそうですよ。

擦り切れたのれんは、人気店の証。毎日たくさんのお客さんが訪れ、すぐにボロボロになってしまうのだそうです。

店名の「長助」は屋号で、店主の苗字に由来しているとのこと。手取キャニオンロードの清掃や、サイクルリーダーの養成などにも関わっており、サイクリングへの理解も深いお店です。店内には空気入れも用意されていて、サイクリストにとってありがたい存在ですね。

てどり桜街道の突き当たり交差点を左に曲がると、すぐに「弘法池」の案内標識が見えてきます。
標識に従って、細い裏通りへ左折しましょう。

柵で囲まれた穴が「弘法池」です。
その昔、この地を訪れた弘法大師が、親切にしてくれたお婆さんに感謝し、持っていた錫杖（しゃくじょう）を岩に突き立てたところ、湧き水が出てきた──という伝承から「弘法池」という名前がついたそうです。また、その形状から「釜池」とも呼ばれており、この周辺の地名「釜清水（かましみず）」の由来にもなっているのだとか。

さて、弘法大師のお話は一旦忘れて……

この穴は「甌穴（おうけつ）」といって、川底の岩にできた小さなくぼみに小石が入り、水流でくるくると回るうちに、長い年月をかけて削られてできた穴なんです。え？でも、近くを流れる手取川は、ずいぶん深い谷底にありますよね？──そう、ここは中学校の地理で習った「河岸段丘（かがんだんきゅう）」の段丘面なんです。

はるか昔、ここは実際に川底だったんですね。この甌穴からは、太古の昔から白山の伏流水が湧き出していて、全国的にもとても珍しい湧き水とされています。白山市の天然記念物に指定されており、昭和の名水百選にも選ばれています。すぐそばの蛇口から水を汲むこともできますよ。

ただし、名水とはいっても生水なので「加熱してご利用ください」とのこと。とても冷たい地下水なので、夏場は汗をかいた顔を洗ったり、頭を濡らしたりすると、とても気持ちいいですよ。

弘法池から約1分。丁字路交差点を左折すると、黄門橋に到着です。

橋を渡って右手にある「寄り道パーキング 手取峡谷（黄門橋）」に自転車を停めて、橋の上を歩いてみましょう。

このあたりから谷がぐっと深くなり、上流に向かって約8kmにわたって険しい渓谷が続きます。谷の深さはおよそ20〜30メートルあり、5〜6階建てのビルに相当するほどの高さです。

「黄門峡」は、鎌倉時代の僧侶・大智禅師が選定した「吉野十景」のひとつ。その上にかかる「黄門橋」は、唐の「高門橋」に似ていることから名付けられたといわれています。また、旧鳥越村に伝わる民話では、鴻の鳥（こうのとり）が向かい合っているように見えることから「鴻門橋（こうもんばし）」と呼ばれた、という説もあります。さらに、兼六園にある「黄門橋」は、この橋が由来となっているという一説もあるそうですよ。

700年以上も前から親しまれてきた“映えスポット”。この絶景は、ぜひ実際に見てほしい景色です！

黄門橋から国道157号を右折してすぐ、左側に茅葺き屋根の「山法師」さんがあります。
こちらは、先にご紹介した「おもてや」さんの本店で、行列のできる大判焼き屋さんとしても有名です。この日も、ひっきりなしにお客さんが訪れていました。

今回いただいたのは、大判焼きとソフトクリーム。交互に食べるとちょっぴり罪悪感がありますが、自転車でしっかり消費するので――実質カロリーゼロです！

……美味しすぎて、大判焼きの写真を撮り忘れてしまいました。

お隣の「吉野工芸の里」には、国指定天然記念物の「御仏供杉（おぼけすぎ）」があります。
樹齢660年以上といわれる杉の大木で、太い幹から四方八方にのびる枝ぶりは、迫力満点。雰囲気も抜群です。こちらにも、大智禅師にまつわる言い伝えが残されているそうですよ。さて、次の目的地「綿ヶ滝」へ向かうため、いったん黄門橋方面へ戻ります。橋を渡り切ったところの交差点を左折し、手取キャニオンロードへ復帰します。

14:00 綿ヶ滝に到着。
黄門橋からは、15分ほどで着きました。
専用の駐輪スペースはなかったため、駐車場の邪魔にならない場所に自転車を停めさせてもらいました（※白山市に確認済み）。左手に展望台、右手に滝。まずは滝の方へ向かいます。林の中を通る遊歩道を進むと、やがて約130段の階段が現れます。これがかなりの急角度で、高いところが苦手な私は、足がすくんでなかなか降りられません……。

手すりにしがみつきながら、なんとか下までたどり着くと──

すごい水量の滝が、轟音を響かせながら流れ落ちています。落差は32メートル。間近で見ると、大迫力です！

巌壁から白く泡立ちながら流れ落ちるその様子が、まるで綿を千切って落としているように見えることから、古くより「綿ヶ滝」と称されているそうです。

舞い上がる天然のミストには、マイナスイオンがたっぷり。タイミングが良ければ、虹が架かることもありますよ！

後ろを振り返ると、そこにはダイナミックな手取峡谷の景色。
切り立った崖は、流れる水が長い年月をかけて削り出したもので、まさに悠久のロマンを感じさせてくれます。数年前まではこの場所に柵がなく、怖い思いをしながら滝を眺めていたそうですが、今ではしっかりと柵が整備され、安心して見物できるようになっています。とはいえ、足元の岩場は滑りやすく不安定な箇所もありますので、見学の際は十分にご注意ください。

展望台へは、駐車場から歩いて200メートルほど。滝からは少し離れているため、静かな雰囲気の中に一筋の流れが見えていて、秘境のような趣があります。

トイレはリニューアルされていて、とても綺麗で快適。この日も、多くの方が涼を求めて訪れていました。

綿ヶ滝から約15分、快調にペダルをこいでやって来たのは、「道の駅 一向一揆の里（食彩館せせらぎ）」さん。
ここは「いしかわ里山里海サイクリングルート」のチェックポイントにもなっていて、サイクルラックも完備されています。訪れたこの日は、ちょうどひまわり畑が最盛期を迎えていました。

お目当ては「ソフトクリーム」！

こちらのソフトクリームは、市販のソフトクリームミックスは使わず、良質な牛乳とたっぷりのバニラビーンズを使った、こだわりのレシピで手作りされています。

神子清水薬草組合が栽培・粉末化した「当帰（とうき）」の葉をトッピングした「当帰の葉ソフト」（季節限定）、白山麓・鳥越に自生する天然よもぎの若葉パウダーを使った「よもぎ粉ソフト」、そして、国産のそばの花から採れた蜂蜜をトッピングした「そばみつソフト」など、どれも魅力的で目移りしてしまいます。

……と言いつつ、全種類制覇しました！

直売所には、地元で採れた野菜や山菜をはじめ、白山麓の名産品がずらりと並んでいます。

中でもおすすめは、鳥越産の玄そばと、つなぎに加賀丸いもを使用した、国内原材料100％の「鳥越そば」。コシのある食感と豊かな風味が楽しめる絶品そばです。

併設のそば処では、自家製粉による手打ちそばを味わうことができます。

手取キャニオンロードに復帰したら、あとはひたすら下り坂。スイスイと気持ちよく進んで、「旧加賀一の宮駅サイクルステーション」に到着しました。所要時間は約30分。
疲れたときは、中間地点にある瀬木野休憩所のベンチでひと休みするのもおすすめです。

加賀一の宮駅は、昭和2年に「神社前停車場」という駅名で開設されました。昭和12年に「加賀一の宮駅」と改称され、その3年後に現在の形の駅舎が完成。白山比咩神社の門前駅として長年親しまれてきましたが、平成21年10月末をもって、鶴来〜加賀一の宮間が廃線となり、駅舎としての役割を終えました。

入母屋造りの社寺建築を採用した駅舎は、昭和初期の近代和風建築の好例として高く評価され、令和3年に国登録有形文化財に登録されています。

現在は休憩施設として整備されており、多目的トイレも設置されています。室内には、往時を偲ばせる資料が展示されており、周辺の観光情報の発信拠点として生まれ変わりました。

手取キャニオンロードの発着地点にもなっており、サイクルラックも設置されています。

16:00　鶴来の街中をゆったり走りながら、eくるっっっとさんに到着。
無事に自転車を返却して、今回のサイクリング旅もゴールとなりました。総走行距離は約40km、所要時間はトータル約6時間。
「自転車で40km!?」と驚かれるかもしれませんが、今回はスポーツタイプ、さらに電動アシスト付きの自転車です。普段まったく運動をしていない同行者でも、問題なく走り切れていたのでご安心ください！

そして何と言っても、サイクリングの魅力は、自動車よりも自然に近く、徒歩よりも効率的に移動できること。しかも、甘いものを食べても“なかったこと”にできる（ような気がする）のも、嬉しいポイントですよね。

白山麓の大自然に、歴史や文化、美味しいものがぎゅっと詰まった「手取キャニオンロード」。ぜひ一度、あなた自身のペースで体験してみてはいかがでしょうか。

今回のサイクリングで訪れたスポットを地図上にまとめました。位置関係の確認やルート検索など、ぜひ参考にしてみてください。