中身もいいけど建物も、心して味わいたい石川の美術館・博物館

収蔵作品に負けない、巨匠たちの渾身の建築物

世界的に活躍する活躍する建築家たちは、石川県でもたくさんいい仕事を残しています。役所、銀行、商業ビル、学校、観光施設、町家のリノベーション・・・。そんな中でも、注目したいのが美術館・博物館の建築。収蔵される国宝や重要文化財、芸術作品、栄誉ある偉人の価値を考えれば、それを置く器も収蔵品のコンセプトに見合った素晴らしいものを期待されます。巨匠たちが収蔵品やミュージアムのテーマにどう向き合い、挑んだか。そんなことを考えながら、建物を観賞するのも楽しい見方です。

金沢21世紀美術館 ・・・妹島和世/西沢立衛(SANNA)設計

「誰もがいつでも立ち寄ることができ、さまざまな出会いや体験が可能となる公園のような美術館」というのが21世紀美術館の基本コンセプト。三方に開かれた入り口を配し、正面も裏もない円形の建物は、街と一体になってすべての人を招き入れます。壁面は主にガラスを使い、「透明で明るく開放的」な建築を求め、さらに内と外とで互いに存在を感じ合う「出会い」の感覚も生み出しています。国際建築展金獅子賞、ブリツカー賞をはじめ、数々の世界的な賞を受賞してきた妹島和世と西沢立衛の建築家ユニットSANNAが設計を手がけました。

中谷宇吉郞雪の科学館・・・磯崎新 設計

世界で初めて人工雪を作ることに成功し、雪や氷の結晶について優れた研究を残した中谷宇吉郞博士の業績を伝えるこの博物館は、磯崎新氏の設計で1994年に開館されました。雪の結晶を模した六角形の塔が印象的な建物です。中庭には、博士の最後の研究地であったグリーンランドから運んだ岩石が敷き詰められ、ここに人口の霧が流れるようになっています。柴山潟の向こうに雪をかぶった白山を望むロケーションは、この地で生まれ育った博士が幼い頃に目にしていた風景を想像させ、偉大な科学者の原点に近づいたような思いを抱かせます。

石川県能登島ガラス美術館・・・毛綱毅曠(もづな きこう)設計

不時着した宇宙船のようにも見える、建物自体がオブジェのような外観。北海道出身の建築家、故・毛綱毅曠氏による不思議な建物は、実は風水の四神思想を取り入れたものだと言います。四つに分かれている棟は、東に青龍、西には白虎、南に朱雀、北には玄武と、それぞれの神様をイメージしたデザインを施し配置されています。宇宙や自然との共生を訴える毛綱氏の思想が、能登島の自然の中で息づいています。建物内部は、常に変化する雲をモチーフにしたオブジェや装飾がそこここに施されています。作品を効果的に見せる細部の工夫に、自由奔放な中にある建築家の濃やかさをうかがわせます。

石川県西田幾多郎記念哲学館・・・安藤忠雄 設計

「西田哲学」を生み出した哲学者・西田幾多郎の功績を伝える西田幾多郎記念哲学館は、かほく市の高台に立つ、コンクリート打ちっぱなし・ガラス張りのモダンな建物。安藤忠雄氏の設計によるこの建物は「思索と対話」がテーマです。直線の壁に囲まれた「空の庭」、円形の窓から光が差し込む瞑想空間「ホワイエ」など、自ら考える仕組みがしつらえてあります。休館日と悪天候時以外は通年、日没から21時半まで、東京スカイツリーのイルミネーションを手がけた照明デザイナー戸恒浩人氏設計監修による「哲学の杜」ライトアップも行われています。

鈴木大拙館・・・谷口吉生 設計

金沢出身の仏教哲学者・鈴木大拙の歩んだ軌跡と思想に触れ、来館者自身にも思索を深めてもらいたい。そのために鈴木大拙館は、建物も重要な役割を担っています。本多の森の丘陵を背にしたモダンな石造りの建物は、「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」の三棟が回廊でつながれ、それぞれに「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」が配置されています。これらを回遊することで大拙と禅について知り、学び、考えるように意図された設計です。設計者の谷口吉生氏は、京都国立博物館平成知新館、ニューヨーク近代美術館新館などを設計した世界的な建築家。石川県ではここの他に金沢市立玉川図書館や片山津温泉町湯を手がけています。

新しいミュージアムが相次ぎオープン

2019年、金沢出身で昭和の日本を代表する大建築家、故・谷口吉郎の生家跡に「建築博物館」が開館します。設計は息子の谷口吉生氏。谷口吉郎の遺品を中心に、著名な建築家の資料や貴重な建築模型なども展示されます。2020年には、「東京国立近代美術館工芸館」が、兼六園に隣接する本多の森にオープンします。予定地の左右には、石川県立歴史博物館と石川県立美術館が並び、アート探索がますます充実することでしょう。建物は、現在出羽町にある旧第9師団司令部庁舎と旧金沢偕行社を移転復元して利用します。重要文化財に指定されているレンガ造りの県立歴史博物館の隣に、明治期の重厚な建造物が並ぶ風景も楽しみです。