「能登復興の旅」観光と教育を合わせた「いしかわ震災学習プログラム」4選

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今回は、令和6年1月1日に能登を襲った最大震度7の地震や、同年9月21日に発生した豪雨災害により大きな被害を受けた地域を巡り、被災地の皆さんの声を伺いながら観光も体験できる「いしかわ震災学習プログラム」をご紹介します。

「能登に行ってもよいのだろうか…」と迷われている方も、このプログラムをきっかけに、ぜひ能登へ足をお運びいただければ幸いです。

「能登復興の旅」観光と教育を合わせた「いしかわ震災学習プログラム」4選

はじめに

今回は、「いしかわ震災学習プログラム」から4つのプログラムをピックアップしてご紹介します。

「いしかわ震災学習プログラム」では、6市町で全26のプログラムが実施されており、「自然の驚異」「防災・減災」「復興への取り組み」の3つのカテゴリーに分類されています。これまでに学校団体・修学旅行・教育旅行・一般旅行者など、幅広い方々が参加し、徐々に注目を集めています。

この学習プログラムでは、能登を巡りながら、二つの災害で被災された方々の体験やそこから得られた学びに触れることができます。災害大国である日本において、今後の備えや防災意識を高める上でも貴重な機会となるため、非常におすすめのコンテンツです。

営業再開に向けた奮闘と再建|のとじま水族館

石川県七尾市の能登島に位置する「のとじま水族館」は、ジンベエザメが悠然と泳ぐ日本海側最大級の巨大水槽や、国内最大級のイルカのトンネル水槽、プロジェクションマッピングによる海中散歩体験が魅力の、体験型の水族館です。イルカ・アシカショーや生きものとのふれあいも充実しています。

  • 被害状況をパネルで展示
  • 学生さんの受け入れ

震災では館内のさまざまな設備が損傷し、多くの生きものが死亡しました。残された生きものも生命の危機に直面し、厳しい状況が続きました。
プログラムでは、生きものを守るため奮闘した飼育員から当時の状況や対応についてお話を伺いながら館内を巡り、発災から約半年で一部営業を再開し、翌年3月22日に全面再開へと至るまでの道のりを学ぶことができます。

当時の写真や映像を交えながら、震災を乗り越えて復興を進めてきた「のとじま水族館」の取り組みを深く知ることができる貴重なプログラムです。

  • 震災時
  • 震災時
  • 学生さんが学習中

震災直後は、まずお客さまと職員の安全確保が最優先でした。
余震が続く中、すぐに館内へ立ち入ることが難しく、職員は屋外から少しずつ被害状況の確認を行いました。

その結果、ポンプの停止により水温や水質が悪化し、生きものの命を守るための作業は非常に厳しいものとなりました。また、断水によってトイレやシャワーが使用できない状況が続く中、職員は車中泊をしながら復旧作業に当たる日々が続いたといいます。

そのような状況の中でも、他の水族館による生きものの受け入れや、一般の方々から寄せられた多くの支援が大きな助けとなり、「助け合いの力」を強く実感したと話されていました。

柳さん
皆さまのお越しを、心よりお待ちしております。
まだ「能登に行っても良いのだろうか」と遠慮される声もありますが、私たちは「今こそ来ていただきたい」と願っています。
皆さまの「旅」が能登の賑わいを生み出し、地域を支える大きな力になります。
ご来館のあとは、「行ってきたよ」「道も問題なかったよ」とぜひ周りの方にもお伝えいただければ、それが復興を後押しする力になります。
柳さん

基本情報

のとじま水族館

所在地:七尾市能登島曲町15部40

連絡先:0767-84-1271

アクセス:金沢駅から車で約1時間40分、のと里山空港から車で約1時間10分

のとじま水族館でのいしかわ震災学習プログラムについて

・体験料金:無料(ただし、入場料は必要)

・受付時間:9:00~17:00(12/1~3/19は9:00~16:30)

・営業日:年末(12/29~12/31)を除く

・申し込み方法:事前申し込みが必要です。電話でお問い合わせください。

のとじま水族館

乗って聞いて知る、震災語り部列車|のと鉄道

震災語り部列車は、能登の美しい景色を車窓から眺めながら震災の記憶を辿ることができる、まさに“移動する資料館”です。能登半島地震で実際に被災した鉄道職員3名が、自らの体験や地域の方々の被害状況を、自分の言葉で語り伝えます。
被災後、約1年3か月の間眠っていた列車を活用し、運行中の車窓から見える現在の風景と語り部の記憶を重ね合わせながら、震災当時の状況を伝える取り組みです。

この語り部列車は、震災の経験を風化させないための大切な役割を担い、未来への防災意識や希望につなげる意義深いプログラムとなっています。

このプログラムでは、語り部が列車の中で3度の揺れを体験した際の話を聞くことができるほか、津波から避難する途中で撮影された貴重な写真を紹介し、震災前後の沿線風景を比較しながら案内してくれます。

現地を訪れたお客様からは、「想像以上の被害だった」という声が多く寄せられています。語り部の言葉や写真、そして実際の景色を重ね合わせることで、地震の被害と教訓を深く心に刻む特別な時間を提供しています。

今回、語り部の宮下さんからお話を伺いました。
宮下さんは、能登半島地震により自宅が全壊し、列車も長期間運行できず、仕事も一時的に停止するなど、厳しい状況を経験されました。避難所ではなく、自宅横の事務所で寝泊まりしながら復旧に向けて過ごした日々もあったといいます。

その中で、熊本地震や東日本大震災の経験者から学んだことを胸に、「自分にできることをしたい」との思いから会社へ提案し、「語り部列車」の取り組みが始まりました。

語り部列車は、震災の記憶を後世へ伝える重要な役割を担っています。宮下さんの丁寧な語りと温かな姿勢に、多くの乗客が励まされているそうです。

宮下さん
「この経験を、どうか忘れないでほしい。」それが、私たちの切なる願いです。
お客様からいただく「来てよかった」という言葉が、私たちの原動力になっています。
私たちは、この震災の経験を教訓として語り継ぎ、「未来を担う子どもたちの希望」につなげたいと考えています。また、これを機に「ご家族で防災について改めて考えるきっかけ」にしていただければ幸いです。
能登はまだ復興の途中にありますが、「今の能登を知ることができる大切な時間」がここにはあります。どうか能登に来て、見て、聞いて、復興への歩みを共に感じていただければと思います。
宮下さん

基本情報

のと鉄道株式会社

所在地:鳳珠郡穴水町大町チ24番地2 

連絡先:0768-52-0900

アクセス:金沢駅から約1時間30分、のと里山空港から車で約15分

のと鉄道株式会社でのいしかわ震災学習プログラムについて

・体験料金:900円+乗車券

・受付時間:10時~17時

・営業日:月・火定休日

・申し込み方法:0768-52-0900、nororyo@po.incl.ne.jp、震災語り部観光列車HPより予約可

・受け入れ時期:下記参照

○一般個人客向け

来年の受入日未定、決まり次第HP等で報告

 ○団体向け

来年度の受入日未定(仮予約として受付中)

※年末頃にはおよその時刻等、2月中旬には決定予定

のと鉄道株式会社

揚げ浜式の塩づくりの再興|道の駅すず塩田村

珠洲の揚げ浜式の塩づくりは、500年以上も続く能登の誇りであり、今も昔と変わらぬ伝統的な技法を守り続けています。この製法は、海水を砂浜にまいて塩の素(かん水)を作るという、非常に手間と時間がかかる作業であり、天候にも左右されます。便利な世の中にあっても、あえて「当たり前ではない」場所で塩を作り続けることで、先人たちが守り抜いてきた文化と、自然に対する人間の謙虚な姿勢を伝えています。

このプログラムでは、揚げ浜式製塩の歴史などを学び、塩づくり体験を行いながら、「防災意識を高めるきっかけ」を提供することが特徴です。震災で海岸が2~3メートルも隆起した現実を目の当たりにし、地滑りが多発した地域の被害状況を、パネルやスタッフの体験談を通じて深く学べます。さらに、社員が孤立した2週間をどう乗り切ったかなど、生々しい話を聞き、災害を「自分ごと」として捉える機会とします。また、お客様には、今しか見られない「復興の現場」を自分の目で見てほしいという強い思いが込められています。


※道路状況の影響で通行できない場所もありますので、現時点では様子を見ながらプログラムの受付を行っています。

地震の被害としては、最も重要な製塩の場である塩田が地割れし、海水を持ってくる海岸は隆起。さらに追い打ちをかけるように、豪雨災害で塩田が約600トンもの土砂に埋まるという二重の被害に見舞われました。それでも、「絶対に塩作りを続ける」という強い決意と、「誰一人解雇しない」という社長の熱い思いに支えられ、スタッフは一丸となりました。ボランティアや学生の力を借りながら、震災から約4ヶ月後には塩作りを再開。今もなお、「人手不足」という困難と闘いながら、伝統を守り続けています。

中野さん
「この伝統を、私たちだけでは守れない」という切実な思いがあります。全国からの温かいご支援で、私たちはまた塩作りができるようになりました。だからこそ、その感謝を込めて、この文化を未来へ伝えていきたい。お客様には、「どうか遠慮せず、今の能登に来てほしい」と願っています。道が悪い、お店が少ないという現状を理解した上で、「応援したい」という気持ちで足を運んでくれることが、私たちの大きな励みです。温かい心で能登の今を見届けてください。
中野さん

基本情報

株式会社奥能登塩田村

所在地:珠洲市清水町1-58-1

連絡先:0768-87-2040

アクセス:金沢駅から車で約3時間30分、のと里山空港から車で約1時間30分

道の駅すず塩田村でのいしかわ震災学習プログラムについて

【塩づくりにふれてみよう。 体験時間:1時間】

塩の資料館、塩田見学、海水撒き体験

1名様×¥500(予定)

【伝統の塩づくりを、もっと身近に。 体験時間:1時間30分】

塩の資料館、塩田・釜屋見学、海水撒き体験、震災の講和(ガイド付き)

1名様×¥2.000(予定)

・受付時間:9時~16時

・営業日:年中無休(臨時休業有)

・申し込み方法:電話(0768-87-2040)、メール(info@enden.jp)

・受け入れ時期:要相談

※現在、来年度に向け体験受入れが可能かどうかを調整中です。

株式会社奥能登塩田村

老舗醤油蔵の見学となりわい復興|カネヨ醤油

カネヨ醤油は、大正15年創業の、約100年にわたり能登の食文化を支えてきた老舗の醤油蔵です。地域に根ざした醤油づくりを行い、今も昔ながらの製法を大切に守り続けています。

工場見学や蔵の見学も実施しており、醤油の原料や製造工程、さらに醤油蔵に息づく歴史と文化を訪れる人々に伝えています。地域の方々はもちろん、食に関心のある方や教育関係者にとっても、能登の食文化を学ぶ大切な拠点となっています。

このプログラムの魅力は、醤油の製造工程を見学しながら、「震災からどのように復旧したのか」という点に焦点を当て、日常生活や事業活動における防災意識を高めるお話を伺うことができる点です。震度7を観測した地域で、社員が一丸となって取り組んだ「自力での水の確保」や「早期の営業再開」に至るまでの道のりなどを通して、震災を身近に考えるきっかけを与えてくれます。

また、醤油蔵ならではの被災状況(もろみ配管の破損や古い建物の傾き)と、その修繕方法や補助金の活用など、専門的なお話も交えながら、来訪者の職業や関心に合わせた防災のヒントを伝えています。

見学の最後には、醤油の食べ比べを体験できます。蔵でもろみを絞って生まれる希少な「生揚げ醤油」は、ここでしか味わえない特別な一品です。

  • もろみがこぼれ出している
  • ペットボトルの製造ラインに変更

震度7の強い揺れにより、もろみ配管が破損して醤油が流出したほか、古い蔵が半壊判定を受けるなどの被害が発生しました。しかし、電気と井戸水が確保できていたことから、社員はすぐに清掃や片付けを開始し、1月4日には営業を再開しました。

復旧の大きな支えとなったのは、ネット注文を通じて寄せられた応援で、修理費用の一部に充てることができたこと、そして知人の協力により毎日遠方から水を運び、仕込み作業を再開できたことでした。
さらに補助金を活用して老朽化した瓶詰めラインを更新し、重い瓦屋根を軽量のガルバリウム鋼板に改修するなど、震災を機に将来を見据えた設備改善も進められました。

木村さん
「能登の醤油蔵は元気です。どうか、私たちが歩んできた道のりを見に来てください。」
震災を経て、能登という場所が全国に知られるようになった今、私たちは醤油を通して“良いもの”を届けていく責任を強く感じています。
復旧の物語は、悲しみだけでなく、多くの方々からの支援と、私たちが諦めずに取り組んできた努力の結晶でもあります。高齢化や人手不足といった課題はありますが、今回の経験を乗り越えながら効率化を進め、100年続く伝統をこれからも守り続けていきます。
ぜひ一度、もろみをご覧いただき、能登の“今”を感じていただければ幸いです。
木村さん

基本情報

カネヨ醤油株式会社

所在地:羽咋郡志賀町鹿頭ムの2

連絡先:0767-46-1001

アクセス:金沢駅から車で約1時間30分、のと里山空港から車で約1時間

カネヨ醤油でのいしかわ震災学習プログラムについて

・体験料金:1,500円(お好きな商品どれでも1点を選んでお土産にできます)

・受付時間:10時~16時の間の1時間で体験いただきます

・営業日:平日・土曜日・祝日(日曜日と年末年始のみ休業)

※蔵見学は、土日・祝日休みです。

・申し込み方法:電話・弊社HPのお問い合わせ、じゃらん遊び体験、から予約可能

カネヨ醤油株式会社

その他の震災学習プログラムの参加方法・申し込み情報について

今回は4か所を巡って取材を行いましたが、どの場所でも皆さんが前を向き、力強く復興に向けて歩みを進めていました。テレビや新聞で被災地の情報を目にする機会は少なくなってきていますが、「見て・聞いて・触れる」体験こそが、能登の“今”を知る最良の方法です。

いしかわ震災学習プログラムをきっかけに、防災について学び、自分が震災に遭った場合にどう行動するかを考え、日頃から備えを整える機会としていただければ幸いです。
※実施状況については各スポットにお問い合わせください。

※いしかわ震災学習プログラムは個人でも参加可能です。

最後に

皆さまが能登を訪れること自体が、復興を後押しする“息の長い支援”になります。観光だけでなく、教育旅行や校外学習などの目的でも、能登の「諦めない力」をぜひ体感しにお越しください。

また、「今行ける能登」という特設ページでは、能登地域で現在訪問可能な施設イベント情報を随時更新中です。

皆様に能登の観光地にお越しいただくことが、被災地の早期復興につながります。ぜひチェックしてみてください。



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