能登半島地震を乗り越えて|七尾城山の歴史・復興の姿を歩く旅
「今の能登へ行って、観光客として迷惑にならないだろうか…」そう感じて、七尾の旅をためらっている方もいるかもしれません。
しかし、七尾を訪れることこそが、復興へ向かう人々への大きな力になります。悠久の歴史を刻む七尾城山(ななおじょうやま)は、能登半島地震で深い傷を負いましたが、現在は力強く復旧作業が進められています。
本記事では、難攻不落の山城として知られる七尾城の歴史を振り返りながら、地震で実際に何が起こったのか、そして今、七尾城山がどのように復興へ歩みを進めているのかを紹介します。七尾城山を訪れる旅は、単なる観光ではありません。それは、復興の最前線に立つ能登の“今”を感じ、地元の人々と心を交わす「能登応援の旅」です。
七尾城とは?上杉謙信も攻めあぐねた難攻不落の山城
七尾城は、今から約500年前の室町時代に、能登守護・畠山氏によって築かれました。七尾市の地名にもなった「七つの尾根」の地形をそのまま活かし、山全体が巨大な要塞となったことから、「日本中世五大山城」の一つに数えられています。かの上杉謙信でさえ、この城を武力で攻め落とすことはできませんでした。
最終的には、城内の家臣による内通(謀反)によってようやく落城に至ったと伝えられるほど、鉄壁の守りを誇った城です。
また、京都の文化人が「天宮(天帝の住む宮殿)」と絶賛したその眺望は、今もなお本丸跡から七尾湾を一望できる絶景として知られています。
震災による深刻な被害状況
国指定史跡である七尾城跡は、2024年1月の能登半島地震により甚大な被害を受けました。主な被害は以下の通りです。
・石垣の崩落
七尾城跡の象徴ともいえる桜馬場北側や二の丸南側の野面積み(のづらづみ)の石垣が、一部崩落しました。
また、大谷川側からの出入り口にあり、権力の象徴とされた九尺石(きゅうしゃくいし)にも崩落の被害が確認されています。
現在、崩れた石垣には、これ以上の崩壊を防ぐためのシートやネットが設置されています。
・城山神社の被害
本丸跡に鎮座する城山神社では、石の鳥居や灯籠(とうろう)が倒壊しました。
・立ち入り制限
本丸への元の入口は、地割れの影響により現在も立ち入り禁止となっています。
現在の立ち入り制限・復旧スケジュール
七尾城跡は国指定史跡のため、修復には文化庁の指導のもと慎重な検討が必要です。
・2024年12月に、応急的な補強工事が完了しました。
・2025年11月からは、約10年間をかけて本格的な復旧工事を開始します。土日は登山口からのトレッキングおよび本丸跡への立ち入りも可能となる予定です。
復旧工事期間中の立ち入り制限等の最新情報は七尾市公式サイトで随時発信されます。来訪前にご確認ください。
復旧工事に取り組む城跡を見学できるのは、非常に貴重な機会です。ぜひ今の姿を写真に収め、10年後の完成後と見比べてみてください。
復興に向かう七尾城山トレッキングコースの魅力と具体的な見どころ
七尾城山のトレッキングは、ただ山を歩くだけではなく、生きた山城の構造を体感できることが醍醐味です。
七尾城山には、地名の由来にもなっている通り、七つの尾根があり、それぞれの尾根沿いには道が通っていたとされています。中でも「大手道(おおてみち)」と呼ばれるコースは整備が行き届いており、初心者でも歩きやすい人気のルートです。
大手道トレッキングコース
初心者でも安心して楽しめるコースです。
登山口駐車場からは、案内看板や道路の矢印を目印に徒歩で大手道へと進みます。山道のため登山靴がおすすめですが、天候が安定している時期であれば、履き慣れたスニーカーでも歩行可能です。
途中には、七尾市街を見下ろすことのできる絶景スポットがあります。
また、山城が築かれていた名残として、敵の侵入を防ぐために人工的に道を断った**堀切(ほりきり)**など、当時の防御の工夫が随所に見られます。難攻不落と呼ばれた山城の知恵と歴史を感じながら、トレッキングを楽しむことができます。
・所要時間:登り片道 約1時間(約4,500歩)
・大手道コース:登山口駐車場 → 大手道 → 安寧寺跡 → 三の丸 → 二の丸 → 本丸跡
一部に通行止め箇所がありますが、安全に迂回できるよう整備されています。
・道の特徴:
道には急勾配の箇所もありますが、山の地形を巧みに利用した緩やかな蛇行ルートとなっています。両側が谷になっている場所もあり、当時の戦の緊張感を想像しながら歩くことができます。
見どころスポット
・安寧寺跡手前の休憩場所
ここからは、唯一七尾の西側(中島町方面)を望むことができる絶景ポイントです。
・二の丸からの眺望
物見台として利用されていた地形がそのまま活かされており、七尾市街から中能登方面までを広く見渡せます。
・本丸跡からの絶景
七尾湾・能登島・七尾市街を一望できるビュースポットです。
夏は海水の蒸気、春は黄砂など、季節によって移ろう自然の表情を楽しむことができます。
トレッキングファンに人気の理由
30年間、城山を歩き続けている地元の方が語るように、七尾城山は「季節ごとに表情が変わって面白い」山です。
訪れるたびに異なる景色や植物に出会えるため、「癖になる楽しさ」があり、何度でも足を運びたくなるのだそうです。
地元の人々の思い・復興への願い
七尾城山を愛する地元の人々にとって、この山はまさに故郷の誇りです。震災後も変わらぬその絶景は、未来への希望を映す景色となっています。
今回の取材で大手道を案内してくださった「七尾城山を愛する会」の会長は、次のように語ってくださいました。
「ぜひ七尾に来て、七尾城山をトレッキングしながら身も心も健康になってほしい。そして、トレッキングを目的に何度も足を運んでもらうことで、地域の賑わいにつながればと思います。」
観光客が元気な姿でトレッキングを楽しむことは、地元の人々にとって「七尾は大丈夫だ」「復興は着実に進んでいる」と実感できる、何よりの励ましとなるのです。
七尾城山を訪れることの意味
七尾城山を訪れ、地元で宿泊や食事をすることは、そのまま地域の雇用と経済を支える確かな復興支援です。そして、訪れた方がSNSなどを通じて「七尾は今、こんなふうに元気です」と発信してくれることは、七尾の復興を全国へ届ける大きな力となります。
基本情報
七尾城跡
住所:石川県七尾市古府町、古屋敷町、竹町入会地大塚14-1、2-4、15-2
電話番号:0767-53-8437(問合わせ先:七尾市教育委員会スポーツ・文化課)
●七尾城山登山口駐車場
住所:石川県七尾市古屋敷町ラントウ5−1
台数:100台駐車可能(無料)
トイレ:有り
七尾城山周辺のおすすめスポット
七尾の歴史と魅力をさらに深く知るために、麓のスポットにもぜひ足を運んでみましょう。
七尾城史資料館
発掘された出土品や能登畠山氏ゆかりの武具、手紙、そして復元CG映像などから、戦国時代の庶民と武家のリアルな生活を知ることができます。
山に登る前後に立ち寄れば、トレッキングがより深い歴史体験となるでしょう。
基本情報
七尾城史資料館
住所:石川県七尾市古屋敷町シカマ藪8-2
電話番号:0767-53-4215(冬期連絡先0767-53-8437)
営業時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、12月11日~3月10日
料金:(個人)一般200円/大学生150円/高校生以下無料
(団体20人以上)一般 150円、大学生 100円、高校生以下無料
※現金のみ
一本杉通り商店街
七尾市一本杉商店街は、七尾城山登山口駐車場から車で約7分の場所にあります。
かつて城下町として栄えたこの通りには、七尾の老舗商店が軒を連ねています。震災を乗り越えようと前を向く人々の温かさに触れながら、七尾ならではの味や品を探してみてください。現在は仮設店舗で営業を続けるお店や、新たに店舗を再建したお店もあります。地元の人々の努力と復興への想いを感じられる、歩くだけでも心温まる商店街です。
おすすめのお店
・沈金体験もでき、石川県の伝統工芸品が並ぶ「漆陶舗 あらき」
・石川県内で唯一の和ろうそく製造元「高澤ろうそく店」
・手づくり醤油の老舗「鳥居醤油店」
・明治29年創業の老舗和菓子店「お菓子処 花月(かげつ)」
どれも、七尾の歴史とぬくもりを感じられるおすすめの名店です。
まとめ|復興の地・七尾城山が伝える勇気と希望
七尾城山は、約500年前の戦乱と、現代の震災という二つの大きな試練を刻んでいます。
崩れた石垣や地割れの段差は、私たちが目を背けることのできない「能登の今」を静かに語りかけてくれます。しかし同時に、復旧へ向けて着実に歩みを進めるその姿は、訪れる人々に「どんな困難があっても、必ず立ち上がる」という勇気と希望を与えてくれます。七尾の魅力は、壮大な景色や歴史だけでなく、困難に立ち向かう人々の温かさと力強さにあります。
また、「今行ける能登」という特設ページでは、能登地域で現在訪問可能な施設やイベント情報を随時更新中です。
皆様に能登の観光地にお越しいただくことが、被災地の早期復興につながります。ぜひチェックしてみてください。