【震災を学ぶ旅】「倉青協防災ネットワーク」御一行様の視察旅行に同行しました
令和6年能登半島地震を経て得られた教訓や、被災地の現状、そして復興の過程を広く知っていただくことが創造的復興の後押しになることから「能登半島地震を学ぶ旅」を企画しました。
今回、東日本大震災での倉庫業の協力体制をもとに立ち上がり、毎年勉強会や視察を重ねている「倉青協防災ネットワーク」が、 将来の災害に備えるとともに支援物資を取り扱う倉庫業が災害時に果たす役割を協議会で話し合うため、実際に被災地を視察に来られました。
この記事はそのツアーに参加した体験レポートです。のと里山空港に到着後、NOTOMORIで地震の概要や地震時に能登空港が果たした役割などの講話を受けたあと、1泊2日で「今行ける能登」を回ったコースをご紹介します。ぜひこのレポートを、能登の団体旅行の参考にしてください。
視察旅行の行程
行程(各項目に飛ぶので目次として使えます)
<全国から前日羽田に集合し宿泊>
~1日目~
9:00 羽田空港発
10:20 NOTOMORIに移動して空港管理会社の専務から震災の体験談を拝聴・質疑応答
11:15 空港周辺の仮設宿泊所見学
12:45 のと里山空港発(貸切バス)
14:00 千枚田発(隆起した海岸に作った国道249号を車窓見学)
15:10 塩安漆器工房発
16:10 能登ワインにて醸造所見学ガイドとワインの試飲・お買い物
16:55 能登ワイン発
17:55 旅館着
<旅館にて宿泊>
~2日目~
10:20 温泉街でお買い物
10:40 和倉温泉発(貸切バス)
13:00 仮設商店街発
13:45 能登食祭市場発⇒富山県へ
ANA747便に乗って能登に到着!
羽田空港を9:00に飛び立ちわずか60分、のと里山空港に10:00に到着。午前中から能登をたっぷり見て回ることができ、空港の便利さを実感できますね。新幹線で金沢駅から入っていてはこうはいきません。
到着口では奥能登総合事務所の県職員が迎えてくれました。県職員の誘導で駐車場敷地にあるNOTOMORIまで移動します。


空港管理会社役員からの講話
NOTOMORIはフードコートのような構造になっており、飲食エリアの一角をロールカーテンで仕切って会場を用意しています。
空港管理会社の能登空港ターミナルビル(株)の前田専務から、資料を見ながら地震の概要や地震発災後の対応や空港が復興に果たした役割などの説明を聞きました。
前田専務が特に強調されていたのが<トイレ問題>。水や食料、寒さも厳しいですが、最も我慢できないのがトイレです。のと里山空港では防災拠点として「水洗トイレ」が一番活躍したそうです。
「のと里山空港では、豊富な雨水を洗浄してトイレ用水として利用しています。発災直後は揺れで電気設備が壊れて発火したことで停電になり、水を循環できずトイレが使えませんでしたが、翌日には復旧し、断水が続く奥能登地域でいち早く水洗トイレが使用可能になりました。」と当時を振り返りながら施設管理者としての説明をしていただきました。
その後も奥能登では停電や断水が長期化し、のと里山空港は自衛隊・警察・消防・電力会社など各支援者のトイレ休憩に利用されました。
説明の後、多数の質疑応答を受け付けました。皆さん自分事として捉え、各々が自社での防災対応と今回の経験談を照らし合わせて確認していました。
参加者から後日お礼のメールで「よりリアルなお話を聞くことができ、視察の価値を大きくしていただけました。テレビや新聞など報道で見る内容と実際に現地でお話を聞いて感じる印象は比較になりません。今回、改めて大きなショックをうけるとともに、能登を支援をしなければいけないと使命感を持ちました。」と感想をいただきました。
前田専務の説明の後、のと里山空港敷地内に建てられた仮設宿泊所を見学しました。仮設宿泊所では「加賀屋」で勤務されていた経験のある職員が、施設管理や予約受付で活躍しています。震災から約1年半が経った現在でも、他県から派遣されている行政職員を中心にほとんど予約が埋まっているそうです。


昼食はNOTOMORIで地元・宇出津港で水揚げされたマグロを使った豪華海鮮丼
今回は「震災を学ぶ旅」昼食付で予約していたので、昼食はNOTOMORIにある「芽吹食堂」で海鮮丼とお味噌汁をいただきました。能登に来たら新鮮な魚を楽しみにされていますよね。本日のお魚は地元・宇出津港で水揚げされたマグロ。脂が乗ってとても食べ応えがあり、濃厚な味わいでした。
「震災を学ぶ旅」昼食付では、ご希望を調整のうえ NOTOMORIに入居する5つの飲食店から1店が昼食を提供します。さらに料金を上げて、小鉢付きなどにグレードアップすることも可能です。
空港に到着して講話、視察、昼食まで空港内で過ごすことができました。午後からは貸切バスで能登地域を回ります。
白米千枚田の見学
貸切バスで白米千枚田に移動し、世界農業遺産「能登の里山里海」を代表する景観の棚田を見学しました。この日はよく晴れて、青い空と海の素晴らしい景色を見ることができ、絵葉書のような素敵な写真が撮れました。また、以前と比べると海底が隆起して白くなっているのがわかります。(左または上が現在のもの)


ここでは、白米千枚田の管理・運営を担う愛耕会にガイドを頼むことができます。今回は日程が合わず、輪島市観光課の職員さんにガイドしていただきました。
千枚田では令和6年1月の能登半島地震の傷跡を修復し、4月から被害の少ない120枚の田んぼで耕作を再開しました。9月の奥能登豪雨で再度崩壊してしまい、二歩も三歩も後退しましたが、たくさんの方の支援で復活を目指しています。令和7年は約100枚で営農しています。

現在は千枚田から白く見える隆起した海底を工事して道路として活用しており、車で走ることができます。この道路はさらに工事を進めるため、元海底の場所を通れるのは今だけ。ぜひこの絶景を見に来てください。「震災を学ぶ旅」では国交省の能登復興事務所から空港に職員をお招きして、この絶景街道の工事などのお話を聞くこともできます。
塩安漆器工房で輪島塗を見学・お買い物
塩安漆器工房では多くの団体旅行を受け入れています。今回も輪島塗の工程を見学させてもらいました。店主の塩安さんに工房を案内していただき「輪島塗は布を巻いたり漆を塗り重ねてとても丈夫なのが特徴」と説明を受け、お買い物でも目利きして選んでいました。


能登ワインでブドウ畑とワイナリー見学
地元で育てた能登産ブドウを原料にして年間12万本のワインを製造しているワイナリーで、ワイナリーの目の前の里山に広がるブドウ畑は最高のロケーションです。実はこれでも全体の8分の1だと言うから驚きです。
中では醸造設備や樽熟成庫を紹介しながら、醸造工程を説明していただけます。


ワイナリーで説明を聞いて飲みたくなってきたところで、ここでは6~8種類のワインを無料で試飲できます。皆さんテンションが上がってワイン談議に盛り上がり、さながら立食パーティー状態です。赤、白、ロゼなどしっかり飲み比べ、気に入ったものを購入されていました。 重い荷物になるので、ワイナリーから郵送してもらうこともできます。

和倉温泉総湯から温泉街散策ガイドツアー
1日目の夜は和倉温泉の旅館で宿泊しました。和倉温泉では「のと楽」など一部の旅館が再開しており、宴会をすることもできます。「被災地で宴会なんて不謹慎じゃないか?」などと遠慮せず、どんどん食べて応援、泊まって応援してください!
和倉温泉では復興のさなかにある温泉街をガイドしてもらいながら散策することができます。今回は2班に分かれ。震度6強を観測した和倉温泉旅館の被害状況、発災当時のスタッフのお客様への対応といった震災の記憶を伝えていただきました。 ガイドの方も被災されており、避難所に身を寄せた際に布団や食料などを旅館さんに用意してもらったことにとても感謝していました。
総湯から街を歩くと、和倉温泉が海のそばにあることや建物がとても大きいことを感じ、復旧工事が難しいことがわかります。一方で解体中の旅館や解体後の更地だけでなく新築の家屋も見られるようになってきており、復興が進んでいることも実感できました。
和倉温泉お祭り会館見学
散策のゴールは和倉温泉お祭り会館です。
ここでは、七尾市を代表するお祭りである、青柏祭(青柏祭の曳山行事)、能登島向田の火祭、石崎奉燈祭、お熊甲祭の4つを展示しています。 いずれも映像や実物スケールの巨大な展示物でその迫力が伝わってきます。祭りの伝統の部分だけでなく、今も続いている話を聞くことができるのは、能登の人々に祭りが愛されている証拠です。


和倉温泉復興ツアーでは商店街で使えるお買い物券1000円分がセットになっています。飲食店でアイスなどを食べて使うもよし、お土産を買って帰るもよし。時間がなくても、お祭り会館やセブンイレブンでも使うことができます。
セブンイレブンもさすが和倉温泉、お土産コーナーなど能登ならではの商品が充実しています。侮れません。
一本杉通り商店街の被災した店舗にて体験談を拝聴
和倉温泉を後にし、同じ七尾市内の一本杉通り商店街まで貸切バスで移動します。一本杉通り商店街では、観光客の方が道を歩いていたらそれだけで近所の美容室で明るいニュースとして話されるくらい、地元で歓迎ムードになっています。ここでは被災して店舗や商品を失いながらも仮設店舗で営業再開する事業者の方々から、復興の体験談をお聞きしました。
まず向かったのは高澤ろうそく店。老舗の店舗は地震で壊れてしまいましたが、商店街の別の場所で仮店舗として営業を再開しています。場所は変わっても色鮮やかなろうそくが並び、安らぐ香りで店内は変わらず素敵な空間になっています。地元のお客様のお線香やろうそくを売ってほしいという要望から営業を再開する決意をしたそうです。必要とされるって素晴らしいことですね。


高澤ろうそく店から商店街を歩いて、漆陶舗あらきに向かいます。こちらも老舗の店舗が地震で壊れたことで場所を少し変えて営業しています。あらきさんでは輪島塗だけでなく、九谷焼や山中塗など石川県の伝統工芸品がたくさん並んでいます。奥の蔵を改装した場所には落ち着いて集中できる体験スペースが設けられ、輪島塗の沈金体験では、自分で考えた絵柄を好みの箸や銘ー皿などの商品に絵付し、世界に1つだけのオリジナル作品を作ることができます。


仮設商店街で昼食
昼食は一本杉通り商店街にある仮設店舗の太左エ門まで歩いて向かいました。プレハブの店舗ですが、新築なので中は新しくてきれいです。30名程度までの団体様を受け入れることができます。
太左エ門さんは能登島で漁師民宿をしていましたが、地震で店舗が壊れてしまい、毎日市内まで通って飲食店を営業しています。元々漁師民宿なのでお魚の鮮度は抜群、料金はリーズナブルです。おいしいお魚でビールもご飯もどんどん進みます。



能登食祭市場にてお買い物・旅の感想
昼食後は貸切バスで能登食祭市場に向かいます。
能登食祭市場では能登の新鮮な魚介類や能登各地の伝統的な味、こだわりの能登の名産品・伝統工芸品を取り揃えています。魚介類を中心とした食べ物や、バラマキ用のお土産などもきっといいものが見つかります。
実は今回の旅の2日目は、能登半島広域観光協会の広報担当「能登デスク 中山さん」にも取材に協力していただきました。中山さんのお力で、旅の案内はもちろん、お客様や観光施設の方との仲が深まり素敵な交流が生まれました。中山さんはSNSを中心に広報活動をされていますので、そちらもあわせてご覧ください。能登デスクさんのX


最後にこの旅の感想をインタビューしてみました。
今回紹介した場所の詳細
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報道で見る内容と実際に自分の目で見てお話を聞いて感じる印象は比較にならず、今回、能登に行けたことは大きなショックと共に支援をしなければいけないと使命感を持ちました。
早速、従業員に旅行の計画の際には能登を検討してほしいと呼びかけます。